S社事例:潜在顧客分析レポート

潜在顧客の特徴と成功のアプローチ

潜在顧客

「潜在顧客」とは、現状に満足・無関心な顧客で、以下の2つの要素を同時に発している顧客として定義されます。

軽い拒否

「忙しいので」「検討します」「今は大丈夫」「まだいい」など、即座に電話を切る(即決拒否)ほどではないが、明確な拒否の意向を示している。

関心 または 質問

「料金」「工事」「省エネ」などの関心語を発したり、「~ですか?」「どのくらい?」といった質問をしたりしている。

つまり

「潜在顧客」とは、「電話は切りたい・面倒だ」という拒否感と、「(OPの話す内容に)少し気になる・疑問がある」という関与が、心の中でせめぎ合っている、態度が揺れ動いている顧客です。

潜在顧客の割合
496件
潜在顧客数
27.0%
全通話に占める割合
58.7%
アポ成功率
41.3%
アポ失敗率

「潜在顧客」(=軽い拒否 + 関心/質問 を示した顧客)として分類されたコール(全496件)における、アポの成功・失敗の割合は以下の通りです。

結果 件数 割合
アポ成功 (Success) 291件 58.7%
アポ失敗 (Fail) 205件 41.3%

全通話 1839件 のうち、「潜在顧客」と判定されたのは 496件 でした。これは、全通話の 約27.0% にあたります。

軽い拒否への対応
1. 「軽い拒否」への"第一声"トーク分析
分析結果

Success群は、顧客の「軽い拒否」に対し、即座に「そうですよね」「お忙しいところ」という共感・受容(Yes, and法)の言葉で応答しています。

2. 軽い拒否後の間
絶対NG

軽い拒否への「被せ」は絶対NG

  • 軽い拒否への「被せ」は顧客の意見を尊重していない印象
  • 押し売り感が出る
  • 信頼を損なう
推奨アプローチ

少し間をおいて共感・受容(Yes, and法)の言葉で応答することで、顧客は自分の意思が尊重されたと感じるため、次のステップ(計算書の提示=アポ)を受け入れやすくなります。

顧客の「軽い拒否」に対するOPの応答の比較
Success例
call_id: xxx-001

OP: ...【検討】第一弾の一つにしてください。

顧客: はい、分かりました。

これは「反論」ではなく「再定義(リフレーミング)」です。

OPは「検討」という顧客の言葉を否定せず、「では、その『検討』のための材料(計算書)をまず提供しますね」という論理にすり替えています。

Fail例
call_id: xxx-002

顧客: ...まだいいんですけど...

OP: あの、【検討】ではなくって...

これは最悪の対応の一つで、顧客の言葉を「直接的に否定」しています。

顧客が感じている「まだいい」という感情を無視し、OPが「検討ではなく」と言葉の定義で議論を始めてしまっています。

結論

Success群は顧客の「拒否」を受け入れて利用し、Fail群は顧客の「拒否」を否定して対立します。

現場での改善アクション
ルール

顧客の拒否語は「否定」せず、「Yes, and(受容 + 提案)」で返す。

シナリオ1: 「まだいい」への対応
call_id: xxx-002 の改善
NG例

顧客: 「あのー、あの、まだいいんですけど...」

OP: 「あの、【検討】ではなくって...」

OK例

顧客: 「あのー、あの、まだいいんですけど...」

OP: 「【そうですよね】、ご検討されますよね。(Yes)」

OP: 「でしたら、そのご判断(検討)いただくための『比較資料』だけでも一度ご覧になりませんか?(and...)」

シナリオ2: 「忙しい」への対応
NG例

顧客: 「忙しいので...」

OP: 「でも、すぐ済みますので!」

OK例

顧客: 「忙しいので...」

OP: 「お忙しいところ失礼いたしました。(Yes) 5分ほどで終わる光熱費削減のお話ですがご興味ありませんか?(and...)」

「お忙しいところ失礼いたしました」「そうですよね、ご検討されますよね」という共感の言葉(Yes, and法)の重みを増し、顧客が「この人ならもう少し話を聞いてもいいか」と態度を転換する隙間(チャンス)を生み出しています。

OPの間の使い方
OPが活用している会話の間を成功通話と失敗通話で比較して分析
発見

メリットや説明を一気に話すのではなく、一文刻みで話すことで顧客エンゲージUP↑

通話全体におけるOP発言中の沈黙時間
7.81秒
Success群

vs

2.66秒
Fail群

平均5.15秒の差は、「潜在顧客」に対して会話への介入を促し双方向の対話を作り出しています。

間を活用することで得られるメリット
1. 情報処理の時間
  • 顧客は沈黙の間に情報を消化できる
  • 理解が深まり、納得感が増す
2. 対等な関係の演出
  • 一方的な説明ではなく、対話として認識される
  • 顧客が「聞かされている」から「話している」へ
Success例
Call id: xxx-003
会話の抜粋:

OP: あのー、実はこの度光熱費が三割から四割、お安く使っていただける
  新しい電力プランがご利用できるようになりましたのでね。

顧客: はい。

OP: 今、地域のお客様から順番のご案内なんですね。

顧客: はい。

OP: で、やはり、あのー、例えば電気料金、今、八千以上お支払いがあるという
  ご家庭様でしたらね、このプランのご利用いただくことで、
  毎月三割から四割前後、お安く使っていただけるお得なプランなんですよ。

顧客: ほんとですか。

OP: ほんとです。昨年の十月一日から、電力会社からスタートされてる
  新プランになっているんですね。

ポイント

一文一文区切ることで発言間に意図的な間を創り出し、顧客の介入を促進しています。

質問の質 - 顧客を考えさせる質問
分析結果

顧客沈黙回数は、アポの成否において3倍以上の非常に大きな差が出ています。
このデータが示すのは、「Success群は、顧客を意図的に『考えさせている』」ということです。

顧客の沈黙データ比較
指標 失敗平均 成功平均 差(倍率)
沈黙回数 0.47回 1.43回 3.05倍
沈黙合計時間 2.22秒 5.51秒 2.48倍
重要ポイント

顧客が「うーん…」「えーと…」と考え込む瞬間を作り出すオープンクエスチョンの活用が、アポ成功の鍵となっています。
単に答えさせるのではなく、「考えさせる」質問を意図的に組み込むことで、顧客のエンゲージメントが高まり、成功率が大幅に向上します。

失敗例

「はい/いいえ」で答えられる「クローズドクエスチョン」を多用し、顧客に考える負荷を与えません。

成功例

顧客が「記憶を辿ったり」「意見を述べたり」する必要がある「オープンクエスチョン」を使い、意図的に「考えさせる時間」を作り出しています。

潜在顧客に有効な「考えさせる」質問 - 2つのカテゴリ

潜在顧客に対し、特に有効な「考えさせる」質問を3つのカテゴリに分けて具体的に提案します。

ケース1:「閉じた質問」を「開かれた質問」に変換する(現状把握)

Success群:顧客が「記憶」や「意見」を語らなければならない「開かれた質問(診断・深掘り)」を使い、顧客に考えさせる

Fail群:顧客が「はい/いいえ」でしか答えられない「閉じた質問(確認作業)」に終始

NGトーク(Fail群の「閉じた質問」)

Fail群は、顧客に「選択肢(ガス/灯油/電気)」を与えてしまい、顧客が思考停止で「単語」を答えるだけの「確認作業」になっています。

call_id: xxx-004 (Fail)

OP: ...今お《風呂》のほうはガスや灯油、電気、どちらで【ご利用になりますか】ね?

→ 顧客は提示された選択肢から「ガス」と答えるだけです。

call_id: xxx-005 (Fail)

OP: ...お《風呂》はなんですか、【ガスですか】、【灯油ですか】。

→ 同様に、顧客は単語で答えるだけで、考える必要がありません。

OKトーク(Success群の「開かれた質問」)

Success群は、最終的には選択肢(ガス/灯油/電気)を提示している場合があります。しかし、その直前に「開かれた質問」を投げかけている点に決定的な違いがあります。

call_id: xxx-003 (Success)

OP: ...で、えーと、今お《風呂》は【何で】沸かすんですか、ガス、灯油、電気?

→ 失敗群と非常に似ていますが、冒頭に「何で」という「開かれた質問(5W1H)」を置いています。これにより、顧客は「(えーと、うちは)何で(沸かしてるんだっけ...?)」と一瞬「記憶を検索」します。その直後に「ガス、灯油、電気?」と選択肢(ヒント)を提示することで、顧客が「あ、ガスだ」と「自分で答えを見つける」という能動的なプロセスを支援しています。

ケース2:「説得」を「意見を引き出す質問」に変える(問題意識の喚起)

Success群:OPが「(顧客側の)意見」を求める(=自己説得)

Fail群:「(OP側の)結論」を提示(=説得)

NGトーク(Fail群の「同意を求める」説得)
call_id: xxx-006 (Fail)

OP: ...電気代がすごく【安くなるので】...

→ OPが「安くなる」という結論(断定)を押し付けています。顧客は「本当かな?」と疑念を持つか、単に「うん。」と聞き流すしかなく、対話が深まりません。

OKトーク(Success群の「意見を求める」開かれた質問)
call_id: xxx-007 (Success)

OP: ...(料金が)お安くなったほうがいいなっていう【お気持ち】はございますか。

→ 「安くなりますよ」という事実(説得)を伝えるのではなく、「どう思いますか?」という感情(意見)を尋ねています。顧客は「そりゃ、安いほうがいいけど...(でも...)」と、自分の「意見」を考えるため、次の本音(「でも工事が...」など)を引き出しやすくなります。

潜在顧客攻略の3つの重要ポイント
1. 「拒否後のアウト」
分析事実

Success群は「受容」し、Fail群は「反論」している。

顧客の拒否発言に対して否定(but)から入るのではなく、受容(Yes and)することで会話を継続させる効果がある。

現場での改善アクション:「Yes, and法」(受容+提案)の徹底

顧客の拒否語に対し、絶対に「But(でも、ですが)」で返さず、「Yes(共感・受容)」で受け止めてから「And(提案・質問)」で続ける。

顧客が「検討します」と言ったら
NG

「でも、今決めた方がお得です!」

OK

「【そうですよね】、ご検討されますよね。(Yes)」

「でしたら、そのご検討に必要な『比較資料』だけでも一度ご覧になりませんか?(and...)」

顧客が「忙しい」と言ったら
NG

「ですが、すぐ終わりますので!」

OK

【お忙しいところ】失礼いたしました。(Yes)」

「5分ほどで終わる光熱費削減のお話ですがご興味ありませんか?(and...)」

2. 「会話の間」
分析

成功通話の多くではOPは説明の中に間を挟み、顧客のエンゲージを促している。Success群とFail群でOP発言中の顧客の介入回数には決定的な差がありました。

Fail群

こちらのメリット提示を優先するあまり、顧客に発言の隙を与えず一気に話してしまう傾向にあった。

Success群

あえて小刻みに提示することで「間」を作り、顧客に情報整理の時間を与え、対話型通話の傾向にあった。

現場での改善アクション:メリットを小刻みに提示

一気に提示せずに意図的に一文一文刻んで提示する。

会話の抜粋:

OP: あのー、実はこの度光熱費が三割から四割、お安く使っていただける
  新しい電力プランがご利用できるようになりましたのでね。

顧客: はい。

OP: 今、地域のお客様から順番のご案内なんですね。

顧客: はい。

OP: で、やはり、あのー、例えば電気料金、今、八千以上お支払いがあるという
  ご家庭様でしたらね、このプランのご利用いただくことで、
  毎月三割から四割前後、お安く使っていただけるお得なプランなんですよ。

顧客: ほんとですか。

OP: ほんとです。昨年の十月一日から、電力会社からスタートされてる
  新プランになっているんですね。

3. 「質問の質」
分析

Success群は顧客に「考えさせ」、Fail群は「答えさせて」いる。

オープンクエスチョンを使うことで顧客に考えさせ、顧客の本音を引き出す。

現場での改善アクション:クローズドからオープンクエスチョンへの変換

単なる「確認」から「意見を引き出す質問」に変える。

NG

「今の電気代は高いと感じていらっしゃいますか?」

OK

「今お使いの(光熱費)について、率直に【どのように】感じていらっしゃいますか?」

OK

「もし光熱費が(今より)下がるとしたら、率直にどう思われますか?」